虚血性心筋症の心室頻拍、カテーテルアブレーションは有効か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/03

 

 虚血性心筋症で心室頻拍を有する患者において、抗不整脈薬治療と比較してカテーテルアブレーションによる初期治療は、複合エンドポイント(全死因死亡、心室頻拍発作、適切な植込み型除細動器[ICD]ショック、内科的治療を受けた持続性心室頻拍)のイベントリスクを有意に低下したことが、カナダ・ダルハウジー大学のJohn L. Sapp氏らVANISH2 Study Teamが実施した「VANISH2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年11月16日号で報告された。

欧米3ヵ国の医師主導型無作為化試験

 VANISH2試験は、3ヵ国(カナダ、米国、フランス)の22施設で実施した医師主導の非盲検(エンドポイントのイベント判定は盲検下)無作為化試験であり、2016年11月~2022年6月に患者を登録した(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成を受けた)。

 心筋梗塞の既往があり、臨床的に重要な心室頻拍(心室頻拍発作、適切なICDショックまたは抗頻拍ペーシングの実施、緊急治療により停止した持続性心室頻拍と定義)を有する患者416例を登録した。これらの患者を、カテーテルアブレーションを受ける群に203例(平均[±SD]年齢67.7±8.6歳、男性95.1%)、抗不整脈薬治療を受ける群に213例(68.4±8.0歳、92.5%)を無作為に割り付けた。

 全例がICDを装着していた。カテーテルアブレーションは無作為化から14日以内に施行し、抗不整脈薬治療は事前の規定に従ってソタロールまたはアミオダロンを投与した。

 主要エンドポイントは、追跡期間中の全死因死亡と、無作為化から14日以降の心室頻拍発作・適切なICDショック・内科的治療を受けた持続性心室頻拍の複合とした。

死亡、心室頻拍発作、ICDショックには差がない

 追跡期間中央値4.3年の時点で、主要エンドポイントのイベント発生率は、抗不整脈薬群が60.6%(129/213例)であったのに対し、カテーテルアブレーション群は50.7%(103/203例)と有意に低かった(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.58~0.97、p=0.03)。
 追跡期間中の全死因死亡(カテーテルアブレーション22.2% vs.抗不整脈薬群25.4%、HR:0.84[95%CI:0.56~1.24])、無作為化から14日以降の心室頻拍発作(21.7% vs.23.5%、0.95[0.63~1.42])、無作為化から14日以降の適切なICDショック(29.6% vs.38.0%、0.75[0.53~1.04])には両群間に差を認めず、無作為化から14日以降の内科的治療を受けた持続性心室頻拍(4.4% vs.16.4%、0.26[0.13~0.55])はカテーテルアブレーション群で少なかった。

重篤な非致死的有害事象の頻度は同程度

 重篤な非致死的有害事象は、カテーテルアブレーション群28.1%(57例)、抗不整脈薬群30.5%(65例)で発現した。また、カテーテルアブレーション群では、術後30日以内の有害事象として死亡が2例(1.0%)で発生し、非致死的有害事象は23例(11.3%)に認めた。抗不整脈薬群では、抗不整脈薬に起因する有害事象として肺毒性による死亡が1例(0.5%)で発生し、非致死的有害事象は46例(21.6%)に発現した。

 著者は、「これまでの研究で、カテーテルアブレーションと抗不整脈薬治療は心室頻拍の再発とICDショックのリスクを減少させることが知られているが、両方とも有害事象を伴い、有効性は完全ではないため、これらの治療法をいつ使用するかが重要な臨床的判断となる」「初期治療として薬物を使用し、薬物療法が無効であればアブレーションを行うというのが一般的な方法であり、現行のガイドラインにも合致する」としている。

(医学ライター 菅野 守)